第1章

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「メリーーークリスマーーース!! HAHAHA!!」 現れたのは次から次へとクラッカーを鳴らし続けるサンタ。ふくよかな身体を赤と白の服で包み、柔らかそうな髭を携えている。そしてこのサンタだけは敦己達と変わらぬ人間サイズだった。そのため動きにくそうに身を屈めている姿が不気味だ。 「うわあああ!! なんか出たああ!! アッくん倒して!!」 「倒すってお前! サンタさんだぞ! 倒したら全国のクリスマスプレゼントが……」 「あんたサンタ信じてんの!?」 「HAHA!! メリークリスマス!! ハッピークリスマス!! チキンチキン!!」 腰を抜かした敦己とケイの手を取り、教室に引きずりこむサンタ。残された友也だけがオロオロと両手を泳がす。 「ぎゃああああ怖ぇ!! サンタさん怖ぇええ!!」 「ちょっ、離して! ていうか季節考えなさいよ! フライングしてんじゃないわよ!」 「ノーノー! 季節! カンガエテル!」 「日本語!」 ようやく腕を放され、教室の真ん中で尻もちをつく敦己とケイ。そんな二人の前に何かを差し出し…… 「イッツ・パンプキンパイ!!!」 申し訳程度のハロウィン要素を思いきり顔面へ投げつけた。 「何してんだコラぁぁああああ!!」 それにブチ切れたのはまさかの友也だ。普段の穏やかさは何処へ行ったのか。般若の形相で渾身のアッパーを叩きこむ。そのままサンタの頭は天井を突き破り、ぴくりとも動かなくなった。パンプキンパイまみれで茫然とするケイの手を取り、立たせてやる友也。 「ケイちゃん大丈夫? 立てる?」 「え、ええ。ありがとう」 「おいコラ。俺の心配もしろよ」 「アッくんは頼りないから姫野ちゃんの運搬係ね」 友也に台車を任されて腑に落ちない敦己だが、気を取り直して次の教室へ向かった。今は使用されていない「生徒会室」の前で固まる三人。先程のサンタの衝撃がまだ余韻を引いているようだ。 「おい友也。お前ピンポンダッシュしてこい」 「この状況で言うならドアノックダッシュね」 「ドアノックダッシュなら行ける気がする!」 スクッと立ち上がり、ガッツポーズを決める友也。位置につき、ヨーイの体勢で拳を振り上げ、ノックと言うよりパンチに近い打撃を打ちこんだと同時に床を蹴った。狭い廊下をものともせず走り抜け、風のようなスピードで敦己の背に隠れる。
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