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けれど何も起きず、業を煮やしたケイが二人の制止を無視して突き進み、生徒会室のドアをほんの少し開けた時だった。
隙間からずるりと現れた長い舌が、ケイの左腕をゆっくりとひと舐めして戻っていく。一瞬の出来事に動くこともままならず、全てを理解してからワンテンポ遅れて悲鳴を上げた。
「いいやあぁあああああ!!!」
「どうしたケイ!!」
「ケイちゃん!?」
我を忘れて左手をブン回すケイ。必死の表情だ。
「なんか!! なんかペロってされた!! 舐められた!!」
「ペロリストか!?」
「ペロリストって何よ!! 馬鹿じゃないの!!」
「ケイちゃん落ち着いて! アッくんがお馬鹿なのは元からだよ!」
「ひでえ」
「うう……気持ち悪い。早く次行くわよ」
精神的に限界の自分を奮い立たせるケイ。隣の生徒指導室に向かうが、ふと友也が足を止めた。
「ねえ二人とも。あそこ……」
ある一点を食い入るように見つめる友也が指を差す。そこは職員室や来賓用玄関などを通り過ぎた向こう側。一般生徒ならば特に足を踏み入れることの無い校長室だ。
狭くて薄暗い廊下の先で、校長室のドアの隙間からは目が眩むほどの光が漏れている。その色はまばゆい黄金色。
「……めちゃくちゃ宝部屋っぽいな」
「分かりやすいにもほどがあるわね」
「待って待って二人とも。そう見せかけて実はサンタが飛び出してくる可能性も……」
心配そうにしつつも、颯爽と校長室へ向かうケイと敦己に友也もついていった。近づけば近づくほどに眩しさが増し、扉に行き着いてからゴクリと唾を飲む。敦己が代表し、扉に手をかけて力をこめた。だが……
「開かねぇ」
「え!?」
「力が足りないんじゃない?」
二人に急かされて足をふんばり、敦己はさらに力を入れるがやはり開かない。その時だった。
「メリーーーークリスマーーーース!!! HAHAHA!!!」
「うわああああ!! アッくん!! なんか来た!!」
廊下の向こうのほうから教室を飛び出してきたサンタ。
「ふふ、僕のフォーク技に酔いな」
「ああああん! 消毒液が! キちゃ……キちゃうのおぉ……っ!」
「安心してください、拭いてますよ」
更にはチーズタルトを弄んでいたブロンド男に続き、保健室の女生徒と保険医までもが飛び出してくる。全速力で駆けて来る様子は狂気に満ちていた。
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