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「嫌ぁああ!! 敦己!! 早く開けなさいよ!!」
「無理!! マジ無理!! 開かない!!」
「アッくんのヘタレ!!」
「うるせえええ!!」
必死にドアノブを回すが、ガチャガチャと空しい音が響くだけ。もはやモンスターにしか見えない奴らが迫り来る。
そのことにパニックになる敦己を、ゆらりと立ち上がった人影が突き飛ばした。
尻餅をついた状態で目を丸くする敦己。呆然とするケイと友也も押し退け、黒いストレートヘアを揺らした華奢な体が校長室の前に立ちはだかる。
「どけ。体育の時間だ」
目を細めてドアを睨みつける彼女は、完全に眠りから覚めた姫野だ。
「姫野さああああん!!!」
取り乱したケイと友也が歓喜し、敦己に至っては涙目で脱力していた。姫野は華麗なバックステップで距離をとり、狭い廊下に苦戦することも無く助走をつける。その勢いで床を蹴り、見事なドロップキックでドアをぶち破った。
「開いた!」
「早く入れ!」
同時に全員が校長室に流れ込み、ドアを閉める。
「ここが宝部屋かしら?」
「なんかよく分かんないねー」
そこでようやく一息つくと、ケイと友也が辺りを物色しだした。外から見た時に漏れていた光の痕跡は見当たらない。残された敦己は少し気まずそうに姫野へ目をやるが、姫野はキリッとした表情のまま無言で仁王立ちしていた。居心地の悪い空気の中、ふと敦己の目に一枚の封筒が止まる。
「なんだこれ」
手にとって見るが、何の変哲も無いただの薄桃色の封筒。開けるとこれまた普通の便箋が一枚出てきた。可愛らしい字がならんでおり、敦己は何の気無しに読み上げる。
「えーっと、なになに。『こうしてお手紙を渡すのは初めてよね。照れくさいけれど、どうしても伝えたいことがあったの。私、浅野ケイは……」
「きゃあああああああ!」
淡々とした敦己の声に反応を示し、絶叫しながら手紙をふんだくったのはケイ。顔を真っ赤に染め、息を荒くして手紙を抱きしめる。
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