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「……」
「……」
なんだこの異様な空間は。
なんで俺はコイツに押し倒されているのか。
なんで無言なのか。
そして、なぜ脱がされかけているのか。
「お願いします!ちょっとだけ!」
「ふざけんな阿呆!」
上にある頭をひっぱたく。いたいっとカタツムリの角のように一瞬引っ込んだが退きやしない。どうにか退かそうとバタバタしてみるが、悲しきかな、身長差とはこんなときまで大きい方が有利になるよう作用するのだ。
「会って早々服貸せとかどういうことだよ!」
「スカートだと木登りできないじゃないですか」
なぜ登ろうと思った。
「困ってたらジャックさんがタイミング良く来たので」
「剥ごうとしたのか」
「はい」
ニコニコすんな。次はグーで殴るぞ。
「わかった、ひとまず退いてくれ」
誰かに見られたりしたら「あっ」
月子の背中から響く聞きなれた声。視界にちらつく見慣れた緑。
「あ、坐湖山さん。こんにちは」
「お、おう…」
恐る恐る目線をあげるとひきつった顔のおっさんと目が合う。
「…まってくれ、きっと誤解だ」
「いや、オッサンはもう行くから、気にするな」
やめろ。慈愛に満ちた目でこちらをみるな。
月子(アホ)に優しくしてやれとかワケわからんことを言うんじゃない。
お前も返事すんな、余計に誤解を深めるだろーが。
「さあジャックさん、更衣室も見つけましたし、観念してくださいね!」
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