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足元がスースーする。その違和感に泣きたくなる。
だが、何よりもあいつの着ていたセーラーですら少し大きいという屈辱に心がけ折れそうだ。
「わぁーかーわいいー」
「ぶん殴るぞ」
「やーですー」
キャッキャッと笑う月子に渾身のグー。
しかしいつものどんくささからは想像もつかない軽やかさで避けられた。ムカつく。
俺の服を着たアホはいい感じのサイズ感ですよ、と要らん報告をしてくる。わざとなんじゃないか?あ?
「なんでオッサンまで…」
「……ぷっ」
「坐湖山さんもかわいいですよ」
「そりゃーありがとな」
ついでとばかりに更衣室(仮)に引きずり込まれた坐湖山のオッサンは前髪をピンクのリボンで縛られ、顔に可愛らしくメイクを施されている。
「じゃあ私、木登りしてきますね!」
「あ、おいアホ月子!服返せ!!」
月子が部屋から飛び出した瞬間に視界が青白くフラッシュした。
伸ばした手は長いおさげすら掴めず、空を切る。
次に目を開けた時には、部屋だったはずの場所は廊下。目の前には、ドアではなく壁。
「あっ…」
「……」
「頑張れよ、ジャック。嬢ちゃん見つけるまでそのまんまだぞー」
冗談じゃないぞ、こんな格好でアイツに会ったらなんてからかわれるか。
アホを捕獲すべく僅かな羞恥と、大きな殺意を持って駆け出した。
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