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慌てて作り笑いをして、殊更明るい声で先生に謝った。
「ごめーん、タカちゃん先生。びっくりしちゃった。
切っちゃったけど大したことナイよ」
「そうなの? 血は?」
……血。
その単語に、ぞくりと寒気が走った。
「ちょっと出てるみたい。保健室行ってバンソーコーもらってきてもいい?」
「それはいいけど」
「ありがとぉー。じゃー行ってくるね!」
切った方の手ーー左手の人差し指を布巾で覆って、あたしは急いで家庭科室を出た。
嘘だった。
本当は結構、深く切ってる。
血が、ぽた、ぽた、ぽたぽたと滴り落ちるのを必死に防いでいた。
誰にも見られたくなかった。
あたしの傷。
あたしの血を。
あたしの、ーー黄色い血を。
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