キチノイロ

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「痛いなぁ……」  どんどん黄色く汚れるトイレットペーパーを見ていると、だんだん涙がにじんできた。 「……もぉヤだ」  うんざりだった。  そして悲しかった。  何で、あたしの血は黄色いの?  この異常に初めて気づいたのはーー小学生になるちょっと前だった。  目の前が真っ暗になった。  赤くない血。黄色く輝く血。異形の血液。  あたしは人間じゃないのかもしれない。  そう思ったら、足下がガラガラと音を立てて崩れた。    その日の夜のことはよく覚えている。  ベッドの中で布団に包まり、ガタガタガタガタひとりぼっちで震えていた。  もしかしたら、ある日突然、あたしは恐ろしい姿の化け物になるかもしれない。  真っ黄色の化け物に。  そしたら、お父さんやお母さん、お兄ちゃんや妹、友達を食べちゃったりするのかもしれない。  そんな想像をするたびに、叫び出したくなった。  怖い。  いつ化け物になるんだろう。  明日? あさって? 一年後?  七歳になったら? 十歳になったら?  怯えるしかない毎日。  黄色い血がもたらす恐怖。  だけどその日はいつまで経ってもやって来ず、中学生になった今でも、あたしは化け物になっていなかった。
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