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「俺は、小暮組の――えーと、昭博ってもんだ。小暮、昭博だな」
自分で言っていて、うれしくなった。
「そうだ、俺は兄ぃの弟だからな。今じゃ、てめぇのせいで他の兄弟達も、みんな死んじまったが。俺は――俺は、小暮昭博だ。悪いな、俺ヤクザでもはぐれ者だからよ。ちゃんとした名乗りのルールは分からんわ」
だから、と昭博は言う。
「死ねや」
それだけで、彼は走り出した。
人類のほとんどは死滅し、あまりにも敵は強大だ。何せ、相手は地球そのものなのだから。人間が住む、この地球そのものなのだから。
だが、それに抗う男がいる。
人の命は地球にも負けないと――突き進む男がいる。いや、政治家の言葉を証明するわけじゃない。そんなのどうでもいい。彼は己のために戦っている。
兄弟の、ために戦っている。
あまりにも状況は絶望的なのに、どうしてか。彼が負ける姿は想像がつかない。
――そう、これがこの男の強さだ。
揺るぎない強さ、揺るがない信念。そう、だからこそ、ここに辿り着いた。戦いはこれからが本番だ。そう、これが全てのはじまりだった。
(了)
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