第1章

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 OPENING  ――13:34。  渋谷のスクランブル交差点。  喧噪。雑踏。  QFRONTビルの巨大液晶があり、少し先に109が見え、人々の目にも覆えない数がカオスながらも規則正しく進む。  赤信号。そして、青信号。  今度は車が行き来する。  その間、人々はそれぞれの道の縁に立ち、信号が変わるのを待っている。  ハチ公前。  銅像周りのベンチに座り、スマフォで連絡を取り合う人々。  声、――と、声。  若者は友達と談笑しながら、ポテトチップスを食べていた。そして、待っていた友人が来たのだろう。彼は、食べ残しのポテトチップスを袋ごとそこらに捨てて、去って行った。  声――誰かの、声。  若者をしかる声はない。  雑音。反響。声。声――と。  スカジャンを来た男が、飲みかけのコーラの缶を銅像脇に置き、電話で話していた。  何度か怒声を上げたあと、男はコーラの缶を片付けることなく消えてしまう。  ――カタカタッ。  コーラの缶が揺れる。  まだ中身は大分あるのに――カタカタと、揺れる。  人々はざわつく。  捨てられたポテチは誰かに踏まれる。 「じ、地震か!?」「きゃああああっ――」「うわあああああっ」人々の声。ゆがんだビデオテープのように――声。 『滅んでしまえ』  その声が、どこかで聞こえた。  ◆ 『滅んでしまえ』  一体の植物が、国会議事堂前に現れる。  正門入り口付近で立哨していた警備員は、目を疑う。  自分が目にしているものが何なのか――コスプレだろうかと。  茨で全身を覆い、中の肉体は緑色で、なのにシルエット自体はなめらかですらりとした細身の女性。そんな、異形の怪人がスタスタとこちらに歩いてきた。 『滅んでしまえ』 「な、何者だね。き――」みは、という前に警備員の首がなくなる。  仲間達は呆然。  数秒後にやっと事態に気づき悲鳴を――上げる前に彼らは死んだ。 『滅べばいい』  この個体の名は、ガイア。  ――地球の意志を宿す、知的生命体であり、執行者であり、植物生命体。  ◆  渋谷、スクランブル交差点のど真ん中から、突如天空を貫くような大木が出てきた。  大木はにょきにょきと空に伸びて、枝葉は羽根を広げるように生える。
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