第1章

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 スクランブル交差点はあっという間に影ができる。信号待ちしていた車のドライバーは目が点となり、あ、これはハリウッド映画なのかなと意味不明なことになる。  揺れはおさまらない。  ハチ公前の歩道も植物がコンクリートを突き破って生えた。  人々の悲鳴。慌てて駆け出す者。どこに向かうのか分からず叫ぶ者。老人や女性を押しのけて、我先にと駅に向かう者――泣き出す子供、それを助けようとする希少な者、それら全てを嘲るように植物は生えていく。  車に乗っていたドライバー達も車を降りて逃げ出した。道路からも植物が生えてきて、車が横転し、中には真下から突き破られたのもいて、そのドライバーは血の海に伏した。  声。    声。      声。       声が、錯乱する。  消えていく。  悲鳴は交響曲となり、足音は下手くそな爆撃シーンのように轟く。その間を縫うように聞こえるのは人体が千切れる音だったり、骨が砕かれる音、もしくは建物や道路が壊れる音だ。  ◆  13:46。  わずか十数分で、国会議事堂が占拠された。  ガイアは議場の中心である演壇に座る。 『……滅んでしまえ、人間ごときが』  ◆  テレビ画面。  突如のできごとに、緊急速報が入る。 【ただいま、渋谷のスクランブル交差点で――い、いえ、全国各地で事件が発生しているようです。突如、コンクリートの下から植物が生えてきて、え? そ、速報では、全世界で起きているようでして。え、えぇ!? しょ、植物が、人を食べているという目撃もあり、また、怪獣のような姿も確認されて】  ◆  07:43。  南アフリカ共和国、首都、ヨハネスブルグ。  突如、植物が生えてきて人々を襲い――  12:46。  中国北京市、天安門広場。  軍人が数名銃火器を発砲しているが、止められるはずがない。  植物は、怪獣のようにクチを広げて――  0:56。  ワシントンD.C.、ホワイトハウス。  大統領のオーバルオフィス、白い質素な空間に電話が飛び交う。 「一体、何なんだ」  大統領は、部屋にあるテレビで映像を見ていた。  世界中で、同時多発的に異様な植物が現れて人々を襲ってるのだとか。
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