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渋谷、スクランブル交差点。
109のビルより大きくそびえ立つ――植物。二足歩行で、ワニのように長いクチを開けているこれを、ビルよりでかいこれを――植物といえるか分からないが、皮膚を見る限りそれは樹皮のようで、所々枝も生えている。それが全身にあるものだから、人間の体毛のように見えた。
WOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO――と、巨大植物は咆吼を上げる。
すると、周りにいた植物をなぎ倒し、殲滅する。
空にはいくつもの飛行生物がウヨウヨしていて、彼らは咆吼を上げた巨大植物めがけて突進してくる。飛行生物は昔のプテラノドンのような形状だが、肌の質はどれも樹皮のよう。彼らは弾丸のように飛来するが、全て巨大植物の拳で撃ち落とされる。いや――中には樹皮に突き刺さったものもいたが、一発――いや二発、三発で死ぬような図体じゃない。巨大植物は四十――五十――百をを越えてようやく、足がふらつきはじめた。
GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――と、ついに巨大植物が倒れた。
109や他のビルも巻き込んで倒壊する。
ビルは爆発したように瓦礫を散らし、跡形もなく崩壊。
道路も大きな傷跡を残し、辺りには粉塵だけでミストのように視界が見えなくなる。
辺りは震撼し、余波だけで周囲の窓ガラスは吹き飛ばされた。
002
巨大植物の左目に穴が空き、そこから一人の男が現れる。
「……っ」
男は体内で植物を傷つけながら携帯で巨大植物の行動を確認、あやつっていたようだ。
彼は煙草を点けようとするが、点かない。
ライターは緑色の血液で完全にしけていた。煙草も同じだ。というか、それよりも前に全身についた粘っこい緑の血に不快感を示してよいのだが、男はそれよりも紫煙を欲した。周りに人がいないかと探すが誰もいない。だが倒れていた人はいたので、その人から煙草とライターを拝借し、紫煙を味合わせてもらう。
「すまねぇな」
拝借した者はすでに死んでいたが、だからって泥棒はよくない。もちろん、許しを受けるヒマもなかったが、とりあえず、彼は緑まみれの財布から――いや紙幣を取り出すのがめんどうになり、財布ごと死体に渡した。運がよければ死体の遺族に渡るだろう。
「――っ、一体全体何が起こってるんだ」
男は、緑色の血液を今頃払う。
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