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彼は黒のスーツを着用していたようだ。しかし、ネクタイは締めていない。厳つい表情からしてカタギにも見えず、無骨そうな表情、そして大柄な体で――
【――我々は、もう滅びるしかないのでしょうか】
残された、巨大液晶のビル。
そこには、ナレーターの悲しそうな表情が映っていた。
【我々は今、地球の意志によるものだという植物達によって殲滅されそうになっています――我々は】
「植物ねぇ」
男は、自身が倒したのを見る。
煙草を吸う。
「……兄ぃを殺したのも、こいつらってことか」
男はニヤリと笑う。
ならば、殺してやると。
相手が植物だろうが何だろうが、関係ない。
殺られたら、殺りかえす。
「それが、ヤクザだ」
003
――15:14
ガイアは下僕に聞く。
『な、何だ……あいつは。ヤクザだと?』
たかが犯罪集団だろ。軍隊のように卓越した武装集団ではなく、ただ犯罪をして収益を成すだけの集団。とてもじゃないが、戦いのために存在する軍隊より弱いはずだ。
『……あの男が、異常なのか?』
調べろ、とガイアは命令した。
しかし、彼らは地球からの意志で、即座に自分らだけのネットワーク回線のようなものを生みだしたものの……それは、自分らだけの話で、人間が作ったインターネットやら機械などに詳しいワケじゃない。ネットに流す動画を撮ったのも、議事堂にいた人間の脳から情報を入手し、やってみただけだ。
【他にネットに詳しい奴はいるだろ。さっさと技術を入手して、奴を探れ!】
いや、ネットを使ったところで、あの男の情報が分かるわけじゃない。
警察だってヤクザの組員を全て把握してるわけじゃなく、さらにいえばあの男が所属している組はかなり小さいものだ。
小さいからこそ――小回りが利き、戦いによく駆り出された。
彼は、陰では暗殺部隊と呼ばれる組に所属している。
名を、「小暮組」。
そして、あの男が慕う兄ぃというのが、その小暮組の初代組長であり、頼まれた仕事は海外に行ってでもこなす――ヤクザというより、殺し屋のチームを作り出した張本人。
小暮昭人(こぐれあきと)である。
004
小暮昭人。それが、彼の敬愛する兄ぃの名である。
そして、彼の名は昭博(あきひろ)。――小暮昭博だ。
兄ぃから、もらった。
それ以前の名は捨てた。
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