第1章

9/12
前へ
/12ページ
次へ
「あのスクランブル交差点で、兄ぃは馬鹿なことに子供を助けようとした」昭博は適当な車を見つけると、中にいた死体を――助手席にどかす。すまないな、と両手を合わせて中に乗った。鍵はついている。エンジンも動く。ただ、運転手の頭がフロントガラスを突き破り、頭に刺さっただけのようだ。「ホント、馬鹿だよな。俺達はヤクザなのに。そんな特撮ヒーローみたいなことしてよぉ。それで死んじまってよぉ、他の兄弟分もなんだぜ。馬鹿だよなぁ」  エンジンが動くのを確認すると、昭博は死体をかつぎ、邪魔にならない脇道に置いておく。  自身の胸元をさぐるが、しまった、財布を丸ごと置いてったと後悔。  すまん、あとで遺族に謝ると、彼は両手を合わせて礼を言った。 「……俺はそんな兄ぃ達の弟だからな」  昭博は辺りを探し、兄弟の落とし物だろう。血に濡れた日本刀を見つけた。それを手にして、車に乗る。青い、日本車。車を走らせる。 【ただいま、国会議事堂は突如現れた植物の親玉らしい者に乗っ取られ――】  巨大液晶でニュースキャスターが語っていた。 「議事堂、か」  昭博は笑う。アクセルを目一杯踏み込んで、議事堂に向かう。  006  だが、勢いよく走り出した昭博でさえ、苦笑いを浮かべる事態に。 「おいおい、本格的に怪獣映画になってきたな」  昭博は、渋谷から国会議事堂まで向かう首都高速三号渋谷線を走っていた。  真上には高速道路があり、今は多少破壊されてるも、瓦礫をよけながら進んでいたが――上空を見上げると、高速道路よりも上に、ビルよりも上に――馬鹿でかい、巨大な植物が歩いていきた。  Kiiiiiiiiiiiiiiiiiin――  金属を擦り合わせたような、甲高い声を上げる超巨大植物。  皮膚はこれまでと同じで樹皮だが、そのでかさは規格外で。今まで怪獣映画の怪獣。日本製の怪獣だったのが、いきなりハリウッドになったかのようなサイズ。ビルはビルでも、この巨大生物のでかさはドバイにあるような高層ビルほどあった。  その巨大さだから――声だけで、車が揺れた。  007 「くっ――これだけで、大地震か」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加