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「あのスクランブル交差点で、兄ぃは馬鹿なことに子供を助けようとした」昭博は適当な車を見つけると、中にいた死体を――助手席にどかす。すまないな、と両手を合わせて中に乗った。鍵はついている。エンジンも動く。ただ、運転手の頭がフロントガラスを突き破り、頭に刺さっただけのようだ。「ホント、馬鹿だよな。俺達はヤクザなのに。そんな特撮ヒーローみたいなことしてよぉ。それで死んじまってよぉ、他の兄弟分もなんだぜ。馬鹿だよなぁ」
エンジンが動くのを確認すると、昭博は死体をかつぎ、邪魔にならない脇道に置いておく。
自身の胸元をさぐるが、しまった、財布を丸ごと置いてったと後悔。
すまん、あとで遺族に謝ると、彼は両手を合わせて礼を言った。
「……俺はそんな兄ぃ達の弟だからな」
昭博は辺りを探し、兄弟の落とし物だろう。血に濡れた日本刀を見つけた。それを手にして、車に乗る。青い、日本車。車を走らせる。
【ただいま、国会議事堂は突如現れた植物の親玉らしい者に乗っ取られ――】
巨大液晶でニュースキャスターが語っていた。
「議事堂、か」
昭博は笑う。アクセルを目一杯踏み込んで、議事堂に向かう。
006
だが、勢いよく走り出した昭博でさえ、苦笑いを浮かべる事態に。
「おいおい、本格的に怪獣映画になってきたな」
昭博は、渋谷から国会議事堂まで向かう首都高速三号渋谷線を走っていた。
真上には高速道路があり、今は多少破壊されてるも、瓦礫をよけながら進んでいたが――上空を見上げると、高速道路よりも上に、ビルよりも上に――馬鹿でかい、巨大な植物が歩いていきた。
Kiiiiiiiiiiiiiiiiiin――
金属を擦り合わせたような、甲高い声を上げる超巨大植物。
皮膚はこれまでと同じで樹皮だが、そのでかさは規格外で。今まで怪獣映画の怪獣。日本製の怪獣だったのが、いきなりハリウッドになったかのようなサイズ。ビルはビルでも、この巨大生物のでかさはドバイにあるような高層ビルほどあった。
その巨大さだから――声だけで、車が揺れた。
007
「くっ――これだけで、大地震か」
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