本編

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草臥(くたび)れたビデオテープのような恋愛が僕は大嫌いだった。 愛したり恋したり、 浮ついたり浮き足立ったり。 マンホールの上でジャンプして、 ちょっとしたチキンレース。 マンホールが外れて落ちていく確率なんて天文学的で。 変な目で見られようが気にしちゃいない。 たまにファイティングポーズなんかとったりして。 ともかく、恋愛なんてものは子供がするもので、 僕みたいな大人は、もっとこう、なんだ。 高尚で、チンケなアルゴリズムに嵌らない、 愛とか恋をするべきなんだと思う。 しばらくして飽きたら、次のマンホール。 また次。 次。 次。 短いスカートから時折見える、白。 跳ねる度、天文学的な確率よりは容易く姿を表す。 3。 5。 6。 17? いや18だっけか。 いつからか数えるのを止めた。 不必要に思い鞄が、足取りを重くさせる。 通い慣れた道。 腕時計の秒針が、徐々に減速していく。 最後の一振りで、止まる秒針。 遠くの方で、目を覚ます始発列車。 見上げると、降ってくる。 イヤホンを、耳につけたまま。 明け方、彼女は自殺する。
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