ニ、彼岸花

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ニ、彼岸花

私、念尉晴菜(ねんじょう・はるな)が通っている中学は文武両道を目指している。一年生の頃は誰も差はないが、二年生になると勉強についていけなかったり部活での成績が落ちる子が出始める。私のように。 私はテニス部に入っていたがレギュラーどころか補欠にも入れない平部員で、勉強の成績も学年の下から数えた方が早い。しかも、性格も外見も美人とはいえない。そんな私にとって同級生の和田海茉莉(わたみ・まつり)は目障りな人間だった。 茉莉は誰にでも優しく、女の私からから見ても可愛くてポニーテールがよく似合う明るい性格の子だった。一年の時は彼女と同じテニス部を選ぶほど憧れてもいた。二年で同じクラスになれてうれしかった。だが、気づいてしまったのだ。学年で一二を競う学力と次期部長候補のテニスのセンスを持つ彼女にはかなわないと。彼女が同級生として笑顔で話しかけてくれる度に、部活で失敗したときのフォローをしてくれる度に、彼女と自分を比べ何度も悔し涙を流した。そのうちに、彼女への憎しみがわいた。いつしか茉莉さえ学校からいなければ悔しい思いをしなくてすむと思うようになったのだ。 そして、ついに。行動をおこした。 その日の放課後、いつもより早く部室に行くと茉莉のロッカーに仕掛けをした。こっそり持ってきた通学路に生えていた彼岸花の汁をロッカーのノブにたっぷり塗りつけたのだ。幸い誰も来ておらず、私の行動を見た者はいなかった。汁を塗りつけた彼岸花は花瓶にさしたのでこれが凶器だと気付かれる事もないだろう。作業の後、深呼吸をして気分を落ち着かせていると他の部員が数人やってきた。彼女達と他愛のない会話をしてその場を切り抜けていたら茉莉がいつものように笑顔で挨拶しながら部室に入ってきた。その後、部室は騒然となった。
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