四、呪歌の番人

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 あの日、自暴自棄になり病室の窓から飛び降りたワタシはベットに拘束されて薬を打たれた。そして、痛みで朦朧とした意識の中、長身で端整な顔をした白衣の男『呪歌の番人』に会ったのだった。 「お前がこのまま自殺すれば、死を撒き散らす悪霊になる。復讐するのは止めないが他人を巻き込むな」 「あなたに何がわかるの!医者から見放されたのよ!!綺麗な肌の人間は皆、死ねばいいのよ。呪いながら死んでやるわ!」 「我は『呪歌の番人』。お前をそんな姿にした者が誰か教えると言ったらどうする?」  朦朧とした意識の中で無様にわめくワタシとは逆に男は冷静に返した。 「知りたければ、このカードから一枚引け。カードが真実を告げる」  目の前に差し出されたカードの束はトランプのように見えたが一面は真っ白でもう片面は真っ黒だった。ワタシは不気味に感じはしたが、意を決して拘束具を付けられてわずかしか動かない手で真ん中にある一枚を引いた。手に取ったとたん黒地の面に白い六角の線が現れた。 「『かごめ唄』か。我は『呪歌の番人』。そいつら、『呪歌の鬼』を管理している。」 「『呪歌の鬼』は過去と未来を伝えることができるわ。そして、憎い者を殺すことができる。でも、実行するかを決めるのはあなたよ」  上から声がして頭をそちらに向けると、綺麗な花が散りばめられた赤い振袖を着たおかっぱ頭で青白い顔の少女がベット柵からのりだして私を覗きこんでいた。小指くらいの角が両方のこめかみの辺りに一本ずつ生えている。彼女の無表情な赤い瞳を見つめると天井がぐるぐる回りだして、意識が夢の中に沈んでいった。  嫌な夢をみた。晴菜がワタシのロッカーに彼岸花の汁を塗っていた。あぁ、だからあの時手が爛れていたのかと納得した。頑張って登校したらクラスのみんなに化け物あつかいされた。一番最初に気持ち悪いと言ったのは学級委員の井野実(いの・みのる)の声だった。彼がこんな酷い事を言う人間とは思わなかった。副委員長としていろいろフォローしていたのに。絶対許さない。  完全に意識が沈む前に『鬼』の声が聞こえた。 「篭の鬼と語部を決めたらカードを破りなさい。あなたの命と引き換えに呪いが発動するから………」
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