第1章

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僕はその日、お姫様と出会った。 成績優秀でスポーツ万能、才色兼備のお嬢様。その名も、花園姫子。 それが彼女に対する周りの評価である。 しかし僕が思うに、猪突猛進で体力底なし、野生の勘で生きてきたような女の子。 花園姫子はそんな子だ。 僕は、始業式の日にその出会いをした。 単位を落とさず無事に2年生になった僕の元に、1年生の証である赤色のスリッパを突っかけ、 「王子せんぱーい!」 突進してきたのが花園さんだったのだ。 ちなみに僕の名前は九条司であり、決して「王子」などではない。ならばなぜ彼女は、僕を「王子」と呼ぶのか。彼女曰く、僕らは前に1度、この高校で出会ったことがあり、そのときに彼女を助けたことがあるらしいのだ。王子様だとあまりに仰々しい気がしたから、少し崩して「王子先輩」にしたのだという。意味がわからないし、僕自身は、花園さんに会っている記憶などないのだから、そんな風に呼ばれても困ってしまう。 「ま、いいんじゃね?姫子ちゃん可愛いし、好かれるのは悪いことじゃねぇ」 そう言うのは、僕の幼なじみである山田大輔だ。金髪にピアスに着崩した制服と、ヤンキー3点セットを身に纏い、先生からも怖がられがちだが、実際はただのバカである。 「つか、俺がいない間にこんな面白い展開になってるとは思わなかったぜ。もっと早く学校に来てればよかった」 遅刻、早退、欠席の3点セットも手に入れている彼は、進級もギリギリだったと聞く。しかし反省の色は全く見られず、2年生に上がって早々欠席し、1ヶ月経った今、ようやく学校に顔を覗かせた。しかし授業はサボった。何しに来たんだこいつは。 憤然として彼を睨む。 「始業式から今まで何してたんだ」 「え?女の子の物色とかナンパとか」 即答だった。こいつはもうダメだ。おまわりさーん、こっちでーす。 とか思ったところで、ふと疑問が浮かんだ。 「なんでお前は花園さんの名前と顔、知ってるの?」 「そりゃ、この学校の有名人だしなぁ。それに俺、姫子ちゃんのこともナンパしたことあるし」 「……ん?」 「中坊が高校の見学に来たときにさ」 中学生が学校見学に来たとき……。 ……あぁ、そういえば、そんなこともあったな。手当たり次第に声をかけまくる大輔を捕まえるのが大変だった。 あの中に花園さんもいたんだ。悪いことしちゃったなぁ。
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