第1章

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* 私はその日、王子様と出会った。 花園姫子という名前から始まり、見た目、才能、全てにおいて周りの人を上回って、小さい頃から「お姫様」と持て囃された私だけど、1度だって満たされたことはなかった。 私は恋がしたいの。 漫画のような、アニメのような、小説のような、そんな恋がしたいの。 いつか私に振り向かない男を落とすことに全てをかけたかったの。 そんな私の前に現れたのが、その人だった。 忘れもしないその日。学校見学のため、私はとある県立高校に足を運んでいた。母親と学内を一通り見て回って、最後に母親はお手洗いに行った。それを待っていたときに、運命の出会いが起こったの! 「お嬢さん、1人?俺が案内しようか?」 金髪とピアスと着崩した制服。見るからにヤンキーだった。一応言っておくけれど、この人とは運命の出会いではないからね。 そして私は少し驚いた。教室を覗いても、廊下を歩いても、視線を感じてはいたけれど声をかけられはしなくて、高校生って意外とオクテなのかなと思い始めていた頃だったから。 私はよそいきの笑顔で控えめに首を振る。 「母と一緒なんです」 そこで気づく。だからこそ誰も声をかけなかったのかな。 しかしヤンキーは引き下がらなかった。 「ちょっとでいいからさ」 「学校は一通り見て回りましたし、これから帰るところなので」 「じゃあーーー」 なおも食い下がろうとするヤンキーに、そろそろ悲鳴をあげようかと息を吸い込んだ時、 「大輔!」 1人の少年がこっちに駆け寄ってきた。 黒髪で、制服はそこそこ着崩してる感じ。ヤンキーとは正反対とは言わないけれど、それでもほぼ反対のイメージの男の子。 ーーーそう、これが運命の出会い! なんと、彼は可愛い私には目もくれず、ヤンキーの頭をチョップしたの。 まず私を見ないことに驚き。ゲイかと疑うわ。 そしてヤンキーの頭をチョップしたことにも驚き。どちらかというと、この人はヤンキーにパシられてそうな感じなのに。 ヤンキーに短くお説教してから、やっと彼は私を見た。 「ごめんね。大丈夫?」 「大丈夫です。助けてくださってありがとうございます」 「本当にごめんね。それじゃ」 きっと、彼が私を見ていた時間は10秒くらい。 目が合ったその10秒で、私はその人のことで頭がいっぱいになってしまったの。
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