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私はその日、王子様と出会った。
花園姫子という名前から始まり、見た目、才能、全てにおいて周りの人を上回って、小さい頃から「お姫様」と持て囃された私だけど、1度だって満たされたことはなかった。
私は恋がしたいの。
漫画のような、アニメのような、小説のような、そんな恋がしたいの。
いつか私に振り向かない男を落とすことに全てをかけたかったの。
そんな私の前に現れたのが、その人だった。
忘れもしないその日。学校見学のため、私はとある県立高校に足を運んでいた。母親と学内を一通り見て回って、最後に母親はお手洗いに行った。それを待っていたときに、運命の出会いが起こったの!
「お嬢さん、1人?俺が案内しようか?」
金髪とピアスと着崩した制服。見るからにヤンキーだった。一応言っておくけれど、この人とは運命の出会いではないからね。
そして私は少し驚いた。教室を覗いても、廊下を歩いても、視線を感じてはいたけれど声をかけられはしなくて、高校生って意外とオクテなのかなと思い始めていた頃だったから。
私はよそいきの笑顔で控えめに首を振る。
「母と一緒なんです」
そこで気づく。だからこそ誰も声をかけなかったのかな。
しかしヤンキーは引き下がらなかった。
「ちょっとでいいからさ」
「学校は一通り見て回りましたし、これから帰るところなので」
「じゃあーーー」
なおも食い下がろうとするヤンキーに、そろそろ悲鳴をあげようかと息を吸い込んだ時、
「大輔!」
1人の少年がこっちに駆け寄ってきた。
黒髪で、制服はそこそこ着崩してる感じ。ヤンキーとは正反対とは言わないけれど、それでもほぼ反対のイメージの男の子。
ーーーそう、これが運命の出会い!
なんと、彼は可愛い私には目もくれず、ヤンキーの頭をチョップしたの。
まず私を見ないことに驚き。ゲイかと疑うわ。
そしてヤンキーの頭をチョップしたことにも驚き。どちらかというと、この人はヤンキーにパシられてそうな感じなのに。
ヤンキーに短くお説教してから、やっと彼は私を見た。
「ごめんね。大丈夫?」
「大丈夫です。助けてくださってありがとうございます」
「本当にごめんね。それじゃ」
きっと、彼が私を見ていた時間は10秒くらい。
目が合ったその10秒で、私はその人のことで頭がいっぱいになってしまったの。
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