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彼がいない間はいつも落ち着きが無くて、自分の部屋をうろうろと歩き回っている。
裏通りから患者がやってくればもちろん治療をするけれど、心の一部は常に窓の外を気にしている。
本日三人目の患者を送り出したときにはすでに昼過ぎになっていて、ナースは椅子から立ち上がるとぐーんと伸びをした。
器具をすすぎ熱湯とアルコールで消毒をして戸棚にしまうと、カフェで遅い昼食を摂ることにしてドアを開けた。そのとき。
――――きしっ
かすかに革張りの椅子が軋むような音がして、ナースはぱっと背後を振り返った。
「……クロウ」
「よう」
ずっと待っていたクロウが、ついさっきまで自分が座っていた椅子に収まっていた。
一週間ぶりに見る彼の姿に、ナースの表情は少しゆるむ。
しかし看護師の瞳は素早く患者の体を眺め回し、いくつかの傷を発見した。
ドアを閉めてデスクに戻ると、引き出しから簡単な医療キットを取り出す。
「おかえり」
「ああ」
三秒にも満たない会話。
ナースは無言で腕の傷口に消毒液をつけ、包帯を巻いた。
クロウは疲れているのか、こっくりこっくりと船をこいでいる。そんな彼の姿にナースは微笑した。
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