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ほどなくして、上中の前に二人の男がやってきた。
間近で見ると、二人とも身体を鍛えてるのか、ごつい。
「お前が変態か?」
金髪のほうがいった。
スキンヘッドが手を伸ばすと、一成の手首を勢いよく掴んだ。
「え?」一成はなにが起こっているのか状況がのみこめなかった。
「警察を呼ぶぞ、コラ」
今度は、スキンヘッドがドスのきいた声でいった。
「えーん、えーん、えーん」
女の子が、金髪の背後で声をあげた。泣いているらしい。が、一成には、どうみてもウソ泣きにしか見えなかった。
一成は、この状況がいまいちのみこめなかったが、自分の立場が危ういことだけは理解が出来た。
ガキに、ハメられている。
「俺はなにもやってない」
興奮した一成の声は裏返っていた。
手首を掴んだスキンヘッドの太い指に力がこもるのがわかった。一成はその手を強引に振り払おうとしたが、スキンヘッドの握力は相当なもので、まったくびくともしない。既に、力でどうにかなるような状況ではなくなっている。
そのときだった。
「やめなさい!」
一成の背後で若い女の声がした。
クラスメイトの中野嬢華(なかのしょうか)だった。嬢華は、腰に手を当てて、いつになく鋭い眼光だった。
「一成。こいつら、なに? だれ?」嬢華が訊ねた。
「俺が知りたいくらいだ」
「あんた。またおかしな連中に絡まれたみたいね。それとも日課?」嬢華が皮肉まじりにいった。「帰宅部なんかしてるからよ」
嬢華は落ち着き払っていた。教室にいる時となんら変わりない様子だ。
三秒ほど沈黙があった後、「はあ。だいたい状況は読めたわ」と嬢華がいった。「そこの金髪とハゲが、女の子にいたずらをしようとしていたところを、あんたが助けようとしたのね」
「はあ?」真っ先に声を荒げたのは金髪だった。「てめえ。なにテキトーなこと言ってんだ?」
スキンヘッドは黙っているが、怒り心頭の様子でぷるぷると震えている。スキンヘッドの指にさらに力が込められる。手首が痛い。
「図星ね」
嬢華の口調は冷静だが、今にも男どもに襲い掛からんとする殺気を纏ってるのがわかる。
金髪が嬢華に近づこうと歩をすすめると、嬢華は受けてたつとでも言わんばかりに、金髪を睨んだ。
一成は慌てて嬢華と男たちの間に割って入った。
「まて。お前はとんでもない勘違いをしている」
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