第1章

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 ほどなくして、上中の前に二人の男がやってきた。  間近で見ると、二人とも身体を鍛えてるのか、ごつい。 「お前が変態か?」  金髪のほうがいった。  スキンヘッドが手を伸ばすと、一成の手首を勢いよく掴んだ。 「え?」一成はなにが起こっているのか状況がのみこめなかった。 「警察を呼ぶぞ、コラ」  今度は、スキンヘッドがドスのきいた声でいった。 「えーん、えーん、えーん」  女の子が、金髪の背後で声をあげた。泣いているらしい。が、一成には、どうみてもウソ泣きにしか見えなかった。  一成は、この状況がいまいちのみこめなかったが、自分の立場が危ういことだけは理解が出来た。  ガキに、ハメられている。 「俺はなにもやってない」  興奮した一成の声は裏返っていた。  手首を掴んだスキンヘッドの太い指に力がこもるのがわかった。一成はその手を強引に振り払おうとしたが、スキンヘッドの握力は相当なもので、まったくびくともしない。既に、力でどうにかなるような状況ではなくなっている。  そのときだった。 「やめなさい!」  一成の背後で若い女の声がした。  クラスメイトの中野嬢華(なかのしょうか)だった。嬢華は、腰に手を当てて、いつになく鋭い眼光だった。 「一成。こいつら、なに? だれ?」嬢華が訊ねた。 「俺が知りたいくらいだ」 「あんた。またおかしな連中に絡まれたみたいね。それとも日課?」嬢華が皮肉まじりにいった。「帰宅部なんかしてるからよ」  嬢華は落ち着き払っていた。教室にいる時となんら変わりない様子だ。  三秒ほど沈黙があった後、「はあ。だいたい状況は読めたわ」と嬢華がいった。「そこの金髪とハゲが、女の子にいたずらをしようとしていたところを、あんたが助けようとしたのね」 「はあ?」真っ先に声を荒げたのは金髪だった。「てめえ。なにテキトーなこと言ってんだ?」  スキンヘッドは黙っているが、怒り心頭の様子でぷるぷると震えている。スキンヘッドの指にさらに力が込められる。手首が痛い。 「図星ね」  嬢華の口調は冷静だが、今にも男どもに襲い掛からんとする殺気を纏ってるのがわかる。  金髪が嬢華に近づこうと歩をすすめると、嬢華は受けてたつとでも言わんばかりに、金髪を睨んだ。  一成は慌てて嬢華と男たちの間に割って入った。 「まて。お前はとんでもない勘違いをしている」
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