第1章

8/9
前へ
/9ページ
次へ
 ……。とって?  とっておき、の響きに、一成の内心は揺らいだ。  目の前の女――少女がいっていることは、嬢華の異常な力の見たからには、事実だとしかいいようがない。あれは人の力で説明がつくものじゃない。  一成は少女をじっと見つめた。こいつは、少なくとも、ただの中二病ではない。  俺にも、常識を超えた力が備わる……のか? 「嬢華のような能力が、手に入るのか?」 「あれは、亜夢を物理でねじ伏せてほしかったから用意したもの。でも、よく考えたら、あの脳筋お姉ちゃんの力を持ってしても、亜夢を倒せるとは思えない。そこで、今、思いついたんだけど」  女の子は、もったいぶるよう間をあけた。 「亜夢も嬢華も、まとめて倒せるほどの力を、お兄ちゃんにはあげる」 「……」  亜夢という嬢華の姉はともかく、嬢華をも超える力。……おそろしい。 「今こそ、お兄ちゃんが本当の最強だって、証明してみせてよ」  さいきょう。  その言葉が、一成の深層に眠っていた中二心に小さな火を灯した。 「わかった」一成は興奮を噛み殺しいつになく低い声を出していた。「やってやるよ」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加