第1章

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 雪は差し出された右手を少しの時間眺めた後、思い切ってその手を握りしめた。  雪を引き起こした後。男は。 「オーディションといきたい所ですけど。参加者はあなたひとりですか……。残念ですがしかたない。はじめましょう」  と、雪の目をしっかりと見つめて言った。  雪は心の中で逡巡する。この人が主演女優を無理やり妊娠させてたのだろうか?だとしたらすべての女の敵だ。 「じゃあ自己紹介からお願いします。芸能事務所に所属している場合は事務所名もお願いします」 「えっええっと犬山雪。18才。事務所は入っていません」  雪は声を震わせて質問に答える。監督のまっすぐな視線に押されて答えてしまったのだ。  監督は雪の顔を真剣に見つめた後、可愛らしい笑顔で、 「よろしくお願いします。雪さん。一緒に世界中の人から愛される映画を作りましょう」  といい右手を差し出してきた。  雪の頭に危険信号が点滅する。こいつは女の敵だぞ。ここから逃げ出せ。  だのに手を伸ばし監督の手を握ってしまった。  雪の手は汗でびっしょりだが監督はそんなこと気にせず、強い力で握り返す。  これが全てのはじまりだった。  
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