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ある休みの日に、ピンポーンなんてインターホンが鳴るから、私は宅配かしらーなんて思いながら玄関を開けた。そうしたら。
「あの、この度…隣に引っ越してきました…彦星といいます。どうぞよろしくお願いいたします」
カンペを丸々ガン見しながら、高身長な青年が立っていた。
「え」
「これ、あの、つまらないものですが…」
テンプレートな言葉と品。いや、良いことだけど、それもカンペ ガン見だからね。覚えようよ、それくらい。
加えて、こちらが満足に受け答えする間もなく、彼は「では」と頭を下げて行ってしまった。本当にテンプレートだな。
「…ひこぼし?」
玄関に一人取り残されて、ふと思う。今さっき隣の彼は、彦星と名乗ったのか?彦星って、あの彦星?七夕の?織姫とセットの?
「まさかね」
めずらしい名字なだけだろう。それか二次元に生きる人なんだろうな。だって、本物は星だもの。
そう思いながら、もらった品に視線を落とす。表には、ご丁寧に筆の書体で“折菓子”と書かれていた。
「ここまでテンプレート…っ」
思わず笑った。まじめというかなんというか、良いことだけど、おもしろい。
「えーと販売元は、………うわ」
ちょっと、これは…。
そこに書かれていたのは、【甘味:天之川庵】の文字。
「ここまで凝るのか」
さすがに若干引いてしまった。うん、あとでネットで調べてみよう。
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