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「いらっしゃいませ。おや、鈴置さん。こんばんは」
L字型のカウンターの中にいたマスターは、すぐに美紗に気づき、柔らかな声をかけた。カウンターを挟んで彼の前にいた長身の客が、振り向いた。
「あ……、日垣1佐」
美紗は露骨に当惑の色を浮かべ、一歩、後ずさった。日垣のほうも、明らかに驚いた顔をしている。
「いつもの席にお移りになります? 今、ちょうど空いてますよ」
マスターは二人の返事を待たず、日垣が飲んでいた水割りのグラスをトレイに載せた。
上官の顔を見るなり逃げだすのは、かなり失礼だろうか。美紗が迷っている間に、日垣は席から立ちあがった。
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