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「一人で飲みに来たのに、入り口近くの席に私が陣取っていたら、確かに興ざめだな。今度来る時は、目につきにくい場所にしてくれってマスターに頼むことするよ」
「そんな、あの……」
彼の向こう側で、夜の街明かりが、美紗をせかすように、キラキラと瞬く。
「……これからも、ご一緒させて、ください……」
口からこぼれるように出た言葉が、恐ろしく恥ずかしかった。美紗は身体の力が抜けたように椅子に座り込み、急いでうつむいた。
マティーニのグラスが目に入った。それを手に取り、中身を少し多めに、口に含む。
喉に焼かれるような熱さを感じながら、もし顔が真っ赤になっていたらマティーニのせいにしよう、と思った。
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