5-4 ライバルとの対面 

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  「あ、さっき言ってたレセプション? それ、何なんですか?」 「昔、東欧に駐在してた時に知り合ったフランス人の友達が、今、在京大使館に勤めててさ。金曜に革命記念日のレセプションやるから、って招待してくれたの。他の知り合いも結構来るみたいで」 「わお、なんかセレブな感じ。ご飯もワインも期待できそうじゃないですか」  大須賀は、直轄チームにいる1等空尉と同じようなことを口にした。 「お子さんは旦那さんに?」 「うん。その日は、たまたま会社の行事か何かで、半日で帰れるっていうから。でもさ、私、いつも定時上がりで子供迎えにいってる身だから、飲み会みたいな場所に顔出すのはなんだかね。他の人に悪いなあと思ってたんだけど……」  吉谷が長を務める総務課文書班は、内部部局の文書課などと違い、取り扱う対象が統合情報局内のものに限られるため、さほど業務量は多くなかった。課業時間外に突発的な対応を迫られることも、ほとんどない。  それでも、子育てをしながら働く者としては、班員や調整先の人間と良好な関係を維持するために、細かいところで気を遣わずにはいられないようだった。 「別にぃ、関係ないじゃないですかあ」  大須賀は先輩の気がかりをあっけらかんと吹き飛ばした。 「なんぼ残業するかより、効率でしょ? うちで吉谷さんより効率的な人、いませんって」  ローズピンクの大きな口が陽気に笑う。吉谷が十歳年下の大須賀と旧友のように仲が良いのは、彼女のひどく鷹揚な性格が気に入っているからなのだろう、と美紗は思った。そんな「ライバル」が、少し羨ましい。  吉谷は大須賀につられてクスリと笑うと、「でも結局ね、仕事として出ることになったの」と、肩をすくめた。 「お仕事?」 「うん。最初の一時間くらい、第1部長殿の奥さん役をしろって言われて」  美紗は思わず「えっ」と声をもらした。しかし、大須賀がその五倍くらいの音量で、美紗の声をかき消した。 「な、何、奥さん役? 日垣1佐の? 何そのオイシイ話!」 「できることなら、メグさん連れて行きたいよ。そうすれば、1部長はあなたに押し付けて、私は最初っからゆっくり友達と飲める」 「ちょ、ちょっと待って。押し付けて? 日垣1佐をアタシに? 是非、押し付けられたいわっ。どういういきさつでそんな話になったんですかあ?」  大須賀は急に目をギラギラさせて、吉谷に掴みかからんばかりに迫った。  吉谷が話したコトの経緯は、美紗が前日に直轄チームで聞いた話とほとんど同じだった。  日垣が、総務課長に事情を話し、吉谷を『奥様代理』に指名したのだろうか。それとも、彼女に直接、レセプションに同行して欲しいと言ったのだろうか。  にわかに、胸の中を、何かが飛び回り始める。
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