5-5 きらびやかな蝶 

8/8
前へ
/320ページ
次へ
 白く細長い光の筋は、無数の小さな灯りに飾られた遊歩道だった。すぐ脇にある二車線の車道と同じくらいの幅がある。道に沿って植えられた木々は、白い電球をまとい、あるいは、落ち着いた緑色を光の中に振りこぼし、歩く者の心を静寂へといざなうかのようだ。    いかにも、雰囲気を求める恋人たちで混み合いそうな場所だ。しかし今夜は、冷たい雨が彼らを建物の中に追いやってしまったらしく、白と緑のコントラストの中を歩く人影はまばらだった。  美紗は、何かに導かれるように、ひとり、その道を進んだ。  遊歩道はやがて車道から離れ、木立の中へと入っていく。そこも、眩しくない程度にライトアップされ、都会的な静けさに満ちていた。  舗装された道を歩く足音だけが、小さく響く。  さらに緑の中を行くと、にわかに視界が開けた。
/320ページ

最初のコメントを投稿しよう!

746人が本棚に入れています
本棚に追加