5-6 森厳な光 

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       ****** 「ガーデンスペースの……ことですよね?」  征が呟くように尋ねた。美紗は、ブルーラグーンにしては青が深すぎるカクテルグラスを見つめたまま、顔を上げられないでいた。家族のいる男性を想って心を乱していたなどと、若いバーテンダーにとっては、嫌悪感を覚えるばかりの話だろう。 「大通りを渡ったところの、高いビルの向こう側にあるやつでしょう?」  美紗がうつむいたまま頷くと、征は一人、静かに語り続けた。 「あそこ、青い世界って感じでホントに綺麗ですよね。LEDを20万個くらい使っているんだそうですよ。僕も時々仕事帰りに見に行ったりするんですけど、あの青い光に包まれたら、もやもや考えていたことがすっかり消える感じで……。なんだか、自分に正直な気持ちになれるから、好きなんです」 「正直な、気持ち……」  美紗は征の言葉を口の中で繰り返した。  家族を持つあの人と、ひと時を共有するだけの関係を、ずっと続けたかった。不道徳だと謗られても、その時の想いを否定することはできない。  美紗は、ブルーラグーンから目を離し、ゆっくりと、正面に座るバーテンダーのほうに視線を上げた。美紗より若いはずの彼は、藍色の瞳に悲しげな色を浮かべながら、包み込むような笑顔を返してきた。        ******
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