8-7 休日の職場

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  「全く、幹部のセリフとは思えんな。その彼女のほうも呼集かかったんじゃないのか。下の階はかなり人が出て来てたぞ」 「恵ちゃ……、あ、大須賀さんのトコには特に連絡なかったそうです。8部はN国マターあまり関連ないですし。ああ、やっと休日に会う約束を取り付けたのに……」  プライバシー丸出しで愚痴り出した小坂を遠慮がちに見やりながら、美紗は佐伯のほうに歩み寄った。 「何かできることはありますか?」 「今日は取りあえず電話番と連絡係を頼めます? あちこちからN国絡みの電話が入って、対応に追われて困ってたところなんですよ。鈴置さんのところでまず集約して、うちのシマの各担当に割り振ってください。あ、これ、N国絡みの調整関係の担当割り」  佐伯は乱雑に書かれたメモを美紗に渡した。 「それから、部長とうちの班の面々の動きを把握しててくれますか。基本的には高峰3佐に留守番役してもらっているんですが、彼ももう少ししたら会合があるそうなので」  口ひげから手を離した高峰は、かすかな笑みを浮かべて美紗に小さく会釈をした。  彼の参加する「会合」とは、おそらく公にはできない類のものに違いない。美紗はちらりとそんなことを思いつつ、黙って会釈を返し、佐伯のほうに視線を戻した。 「あと、各地域担当部からどんどん情報が上がってくるから、ヒラ情報だけ逐次チェックして、重要なものだけマーキングして西野1佐とうちの班でシェアできる状態にしてください。何が重要かの判断は鈴置さんに任せます」 「はい」 「この作業は、申し訳ないけど、週明け以降もしばらくお願いすることになると思います。今回は少々長引きそうですね。現時点での感触では、N国のバックに隣の某大国がいる可能性が大のようだから」  いささか不吉な言葉を口にした佐伯は、不安げな顔をした美紗を見て、慌てて「いやいや」と手を振った。 「別に今すぐ戦争が始まるというような話じゃないんですけどね。しかし、正確な情報分析をして政府の危機管理に資するというのが我々の仕事ですから、最大限の体制で臨むことには変わりありません。鈴置さんも仕事が増えてしまって大変ですが……」 「それは、大丈夫です」 「ありがたいですねえ。今後、武内3佐はおそらく局内の取りまとめで手一杯になるので、状況によっては彼のサポートも……」 「その武内3佐はどうしたんですかあ!」  ふいに二人の会話に割って入った小坂は、丸顔を膨らませて、佐伯の向かいの空席を指さした。
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