3-3 1等空尉の不満 

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  「ここでは、私は、相当、出来の悪いほうだと思うんです。情報局に来られて嬉しいのは間違いないんですけど、本当にここにいていいのかって、毎日考えてしまって……」 「語学だけ出来りゃいいってもんでもないよ。取りあえず、うちのチームに入ったのは正解じゃない? 調整業務も地域担当のほうの仕事も、広く浅く経験できるから、将来の選択肢が増えるわけだし。ラッキーって思っときなよ」  宮崎は、銀縁眼鏡を外すと、意外にも人懐っこい目で美紗に笑いかけた。  一方、一人で文句を並べ立てていた片桐の口は、急に悲しそうなへの字になった。 「すいません。僕、ずっと鈴置さんにいろいろ失礼なこと言ってたよね」  片桐は、大きな音を立てて机の両端に手をつくと、驚いて目を見開いた美紗に、額をこすりつけんばかりに頭を下げた。 「僕が悪かったです。これから心を入れ替えて精進します」 「エリート君の富澤3佐の檄より心に響いちゃったよねえ」  宮崎がニヤニヤしながら茶化すと、片桐は真面目な顔で付け加えた。 「四回で合格できるように頑張りますから」 「…って、CSって、四回までしか受けられないんじゃなかった?」  未来の高級官僚が呆れて声を上げると、直轄ジマの近くに位置する総務課から、忍び笑いが聞こえてきた。  若手しかいない「直轄ジマ」がやっと静かに仕事を再開してしばらくすると、班長の比留川が額に汗を浮かべて戻ってきた。 「鈴置。今日の午後、特に急ぎの案件抱えてないよな。今やってる情報交換会議なんだが、一時半から始まるセッションだけ、あんた入ってくれるか?」
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