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二人は、半階分の階段を上り、地下二階のフロアへ出た。人気のない廊下を突き当たりまで来ると、日垣は、壁と同じ色をした厚い鉄扉の電子ロックを解除した。
ドアの向こうに、敷地内に複数ある建物を繋ぐ、長い地下通路があった。天気がいいせいか、そこを通る人間の姿は見えず、遠くに響く足音だけが聞こえる。
「今後のことは追って指示する。それまで、先ほどのセッションのことは他言無用だ。『直轄ジマ』の連中にも話すな」
日垣は周囲の様子をうかがいながら、早口でささやくように言った。
「周りに何を聞かれても適当にごまかしておくんだ。絶対に気付かれるな」
「でも……」
日垣の真意が分からなかった。なにより、何もなかったフリをしていられるか、とても自信がない。
不安げな顔をする美紗を、日垣は無理やり外に押し出した。
「君の言い分は後日聞かせてもらう。いずれ内部調査が入るだろうから、身の潔白を主張するつもりなら、今後の行動にはせいぜい気を付けろ」
言い捨てるような言葉とともに、ドアが閉まった。自動ロックがかかる嫌な音が地下通路に響いた。
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