教室の戸を開けると、そこには…

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教室の戸を開けると、そこには…

 教室の戸を開けると、そこには、ほとんどいつもと変わらない教室があった。そう、ほとんど変わらない、だけど、ちょっと違っていたんだ。  机と椅子や黒板とかはいつもと一緒だけど、それ以外のものがないんだ。そして、誰も、いないんだ。そういえば、学校に来てから、だれにもあわなかったなぁ。おかしいと思ってたんだ。でも今日は、休みじゃないし、振り替えでもなかったと思うけど。んー、どうしてだろう。うーん…。  あ! そうだった! いっけねぇ~! ここじゃぁなかったよ。昨日散々言われたのをすっかり忘れちゃってた。よくやっちゃうんだよね、こういうこと。でも、どうしようかなぁ、家に帰ろうかなぁ。家って、どこだっけ?  ボクは床にランドセルをおいて、開けてみた。教科書やノートが入ってる。ノートには、『国語』とか『算数』って書いてあるね。へー、ボクってこういう名前だったんだ。『木村光太郎』。で、なんて読むんだったっけ?  たしか家は…。このノートだったかな? 表紙に、なにも書いていない。ノートを開けると、あ! 家までの地図、書いてあるよ。よかったぁー! これで、家には帰れるね。  下の方に、『木 村 光 太 郎』って書いてあって、『き むら こう た ろう』と書いてある。ああ! 思い出したよ! ボク、木村光太郎だ! うんうん、ちゃんと読めるよ。いつもこうだから、参っちゃうよ。人の顔と名前はちゃんとわかるんだけど…。  でも、どうしよう。連絡できないし。職員室には、誰もいないだろうなぁー。あ、でも一応、行こうかな、職員室。苦手だけど。  ボクは、職員室にいってみた。誰もいないし、静かだ。夜の学校も怖いんだろうけど、明るくても誰もいない学校って、なんだか怖いよね。
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