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リーリリリーリー
.........ガチャッ
仄かな沈黙と無機質な電子音は、過去と現在に終止符を打つ。
突きつけられた情報は、私にはとても受け入れられない。
早く否定しないと。
思えば思うほど、口は動いてくれなかった。
フィクサー01は、そんな私を楽しそうに眺めていた。
この小さな少年には始めから分かっていたのだ。
「満足したかい」
満たされていない。
でも、これは真実なんだ。
嘘にまみれていたのは、他ならぬ真実の方だったのだ。
「そんなに落ち込むことはない。また新しい物を探せばいい。君が信頼して、疑わない無機物を。そう、君には人間なんて頼れないんだから」
「黙って」
「端末は正しい、いつだって集合意識を反映し、妥当で適度で明確な情報だけを垂れ流す」
「黙ってって言ってるでしょ」
私は使えなくなった信頼を、フィクサー01に投げつけた。
彼はそれを左手で受け止めて、握り潰してしまう。
金属片が綺麗に落下していく。
そうだ。
どうして忘れていたのだろう。
端末は、壊れる物なんだ。
なんでそんな当たり前のことを...
「僕はとても優しい。だから、君に切符をあげよう。いいかい、大事にするんだよ」
そう言い残して、フィクサー01は帰ってしまった。
私は与えられた新しい無機物に目を向け、早くもそれを知りたいと(それこそ彼の思惑通りに)動いてしまった。
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