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ふと千佳子が口を開いた。
「トモ、猫飼えば?」
「え? どうしてそうなるの」
「猫がいれば、家に帰る理由ができるじゃない。撫でればα波も出るらしいよ」
「猫か。いいかも……って、それって寂しい女のやることでしょー!」
「……」
千佳子は少し考えてから返事をした。
「だって、寂しい女じゃん」
「……そっか。そうだよね」
なんとなく2人とも無口になった。
「……」
友はビールを高らかに上げて飲み干した。
「ヨシ。寝よっと」
「え? あんた家主より先に寝る宣言!?」
「明日早いんだよね」
「……」
言うが早いか、友はチッペンデールのソファに横になった。
しょうがないので、千佳子は毛布を持ってきてそっとかけた。
友のまぶたが少し腫れている。
この部屋に来てから振られたことの詳しいところは話さないし、千佳子も聞かなかった。
何がどうしてそうなったかは分からないけれど、聞かなかったのは、その悲しみの深さだけは友の雰囲気から伝わってきたからだった。
千佳子はそれだけで、この部屋に来るには十分な理由になると思ったのだ。
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