1  私の幸せはひどく遠い所にある

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千佳子は勤務後に連絡をして、不動産会社へ向かった。 「トモいる?」 「あ、チカいらっしゃい。そこ、座ってて」 古びた不動産会社の引き戸を閉めた。 狭いフロアに幾つか机があり、どれも年季が入っている。 机の上には書類やらファイルやらが山積みになっている。 古くからある地元密着型の不動産会社といった様子だ。 「で?どうしたの、急に引っ越しだなんて」 友は千佳子の向かいのソファーに座り、足を組んだ。 「……」 千佳子はその綺麗な足にみとれていた。 「ね、きいてんの?」 「あ、うん。とにかく、職場から近いのがいいの」 「予算は?」 「7万くらいかな」 「1DKのマンション?」 「うん」 希望を聞きながら、友は分厚いファイルをめくり始めた。 「チカ、最近どうなの?」 「え?」 「楽しくやってんの?」 「……フツー」
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