1  私の幸せはひどく遠い所にある

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車に乗ったら沈黙が続き、千佳子は何か話さなければと思っていると友が先に口を開いた。 「2人きりでドライブなんて、久しぶりだね」 「そうだね」 「しばらくあんたに避けられて、結構傷ついたんだよ」 「……」 千佳子は返す言葉もなかった。 「たしかに私も悪かったかもね。でも、一番大事にしてたってのは本当だからさ」 千佳子はそのセリフを、不倫した夫が妻に言っている逃げ口上の様に感じていた。 「千佳子は信じなかったけど、そういう好きってのもあるんだよ」 ヘッドライトが友の顔を照らした。 それを見て千佳子は、やっぱり友は綺麗だと思った。 今でも好きだと思った。 でも、付き合うとなると無理だと思った。
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