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というわけで、友を部屋にあげた。
「おお?いいカーテン付けたね。高そう」
「まあ、お金だけはあるね」
大きな窓にかけたカーテンを見て、友は言った。
「ダマスク柄、流行ってるもんね」
「いや、私の好みって前からそういう方向だったし」
断言するだけあって、この部屋はどこかヨーロッパを感じさせる家具が多い。
チッペンデールのドレッサー、ダマスク柄の織りが入ったシルクのクッションカバー。淡い色合いなので、ヨーロピアンフレンチといった感じだろうか。
友はチッペンデールのふかふかした椅子に座った。
「たしかに。時代があんたに追いついたってか」
友がからかった。
「私がこういうのダメだったから、反動?」
友はニヤニヤしている。
元2人の部屋は、シンプルを絵に描いたような部屋だった。
友の趣味で、現代アートのポスターが貼られていた。
千佳子は恋人に自分を合わせるのが愛だと思っていたのだ。だから、ヨーロッパの香りはしないインテリアだった。
唯一千佳子のシャンプー類だけ、パッケージが流線型のヨーロピアンデザインのものだった。
千佳子は真顔で答えた。
「さあ。そんなこと良いから、食べよう」
「はーい」
千佳子はお腹が空いていた。
これが終わったら……と思いつつ作業をしていたら、すっかり食事のことを忘れていたからだ。
マホガニー調のテーブルにそぐわない、焼き鳥とビールの缶が並んだ。
焼き鳥からは湯気が立っている。
「グラス洗うの面倒だから、缶のままでいい?」
「いいよ」
友は返事をするなり、鶏モモ串を口にした。
「ん、旨い」
つられて千佳子もつくね串を手にした。
「あーーーー、ホント。炭火は違うね」
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