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しかし、千佳子に思う所がないわけではない。
千佳子は友に恋人がいるだなんて、一言もきいていなかったのだ。
それが友の気遣いなのか、ただ単に言う機会を逃していただけなのか……
千佳子にとって腑に落ちないのはそこだった。
でも、そのことをまくしたてる程に千佳子も子どもではなかった。
千佳子だって、友に言わないことはいっぱいある。
あえて言う必要もないし、友が少しでも傷つくと思えば言い出せないのだ。
だから今回は何も言うまい、そう決めていた。
それが千佳子の優しさだった。
そしてそのことは、友も感じていた。
電話をした時の涙は、千佳子が来ても良いと許可してから流れたものだったのだ。
友は、別れた寂しさに涙がでたのか、それとも千佳子が何も言わず受け入れてくれた嬉しさに涙がでたのか……分からないでいた。
ただ、千佳子が受け入れてくれたことが心底嬉しかったのは確かだ。
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