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「おはよう。出勤するよ」
結局、千佳子が早く起きて友を起こした。
6時頃に起こされた友は、大急ぎで仕度をして一泊の礼もなく自宅へ帰った。どうしても必要な仕事の資料が自宅にあるとのことだった。
千佳子は友が帰ってから、いつも通りの朝の仕度にとりかかった。
千佳子は、朝目覚めたら誰かが居る……そのことが嬉しくて、しばらくニヤニヤしていた。
「おはようございます」
千佳子が出勤すると、千佳子の前の机に段ボール箱が置かれていた。
中には教材がぎっしり詰まっている。
嫌な予感がした瞬間に、教頭に呼ばれた。
「ちょっといいですか」
「……はい」
呼ばれて校長室に行くと、昨日会った野口と校長が談笑していた。
「あ、佐伯先生。朝からすみませんね」
校長が手招きをした。すると野口が立ち上がった。
「野口くんのこと、今日からお願いします」
「あ、はい」
「実は……野口くんは僕の甥でね。なかなか力のある男なんですよ。化学の教科担当の先生には話をしてありますし、佐伯先生は弟子が増えたと思って色々教えてやってくださいね」
「は、はい」
すると野口は礼をした。
「あの、宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しくお願いします。とりあえず……荷物整理が終わったら声かけてくださいね」
「はい」
千佳子は心の中で毒づいた。
ー化学担当なら化学担当の教師につければいいのに!ー
そしてため息をついた。
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