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千佳子は校長室を後にした。
すると、ぴったりと後ろから野口が付いてきていた。
「顔に出てますよ」
不意に野口が話しかけてきた。
「何をですか?」
「こいつ、コネ就職かって。」
「……そりゃ、今の時代コネでもなければ就職だって難しいですよね」
野口は黙った。
「でも、校長だって何の取り柄も無い人を雇うほどバカではないと思いますよ」
野口は少し驚いた表情をしている。
千佳子は大真面目に言い切った。
「もう学生じゃないんですよ、余計なことを考えている時間はありません。先生として頑張って下さいね」
それだけ言うと、千佳子は野口にかまわずに先を歩き始めた。
内心、千佳子は毒づいていた。
ーー校長の手前ああ言ったけど……一番納得いかないのは私だよ!ーー
野口は少し離れて歩き始めた。
野口の存在を背中に感じながら、見透かされたことに腹を立てた千佳子は眉間にしわが寄っているのに気付いて、急いで眉間をさすった。
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