25人が本棚に入れています
本棚に追加
千佳子が授業をしている間中、野口が戸口の隅で見学していた。
自分の担当教官の授業の見学なんて何日かでやめるだろうと思っていたが、いっこうにやめる気配がない。
かといって親しみをもって話しかけてくるわけでもない。
用件のみの会話や授業のアドバイスが中心だ。
千佳子はイライラしていた。
「センセ、眉間にシワ寄ってますよ」
高野がこっそりと千佳子にささやいた。
焦った千佳子はとっさに眉間に手をやった。それと同時に、高野の声が色めいている様に感じた。
「どうですか?野口センセは」
「え?あ、うん。頑張ってるよ」
「……そっかー。そうですね。うん」
「何?どうした」
高野がもじもじしている。
「野口センセ、男前で生徒にも人気あるんですよ」
「……そうなんだ。で?高野先生もファンなの?」
「そんな、ファンだなんて!私の年齢層の女子だったらガチでロックオンですよ?」
「既婚者なのに?」
千佳子はさらりと言い放った。
「……」
高野の目が点になった。
「ええええええーーーーーー!?」
職員室中に高野の声が響き渡った。
最初のコメントを投稿しよう!