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高野は目を白黒させながら一生懸命納得しようとつとめていた。
しかし、やはり納得がいかなかった。
「佐伯先生……」
「ん?」
「なんていうか……分かりました」
高野はそれだけ言うと席を立った。
千佳子は高野と思う所は違うものの、やはり野口は物議をかもす男だと思った。
老け顔新卒家族持ち、謎はないがどんな奥さんなのかが気になってくる。
千佳子が真っ先に思ったのは「何故こんな男がごく普通の幸せをイチ早くつかんでいるのか」ということだからだ。
そうして研修期間を終え、野口が教壇に立つ日が来た。
担当教官はついたままなものの、ほぼ独り立ちに等しい。
季節は夏を迎えようとしていた。
校長の甥だからか、歓迎会の音頭は校長がとった。
しかも、ちょっとお高い料亭である。
一般教員の歓迎会と価格差も温度差もあるものの、千佳子は純粋に料亭の料理をとても楽しみにしていた。
勿論、教員の中には不満げにしている者もいる。
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