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千佳子達が料亭に着く頃には、ほぼ全員いい感じになっていた。
後輩教師にありがたい説教をする者、ただただ手酌でのむ者、それぞれが楽しんでいた。
「あ、佐伯先生!お疲れさま!こちらへいらっしゃい!」
ほぼできあがっている校長に呼ばれた。隣りには野口が黙って赤い顔をして座っている。
「……」
千佳子は高野に目で合図をしてから、校長の隣りに座った。
「いやいや、本当に佐伯先生にはお世話になって……まあまあ一杯!」
千佳子のグラスにビールがつがれた。
「すいません、校長先生」
千佳子も校長のグラスにビールをついだ。
「いやいや、どうですか、彼は。ちゃんとやっていますか」
校長が野口のシャツの腕あたりをつまんで言った。
野口も軽く会釈する。
「はい、とても勉強熱心で今でも授業の見学をしていますよ」
「そうかそうか、佐伯先生の授業は保護者にも評判がいいですから。野口君しっかり学びなさい」
校長は赤ら顔のまま、今度は若い教師の方へビールを持って行ってしまった。校長の座布団を挟んで野口と向かい合った。
目が合ったものの、何を話していいのか分からない。
とりあえず千佳子はビールをつごうとビール瓶を持った。
「ビールでいいですか?」
「いや、あの……俺だいぶのまされて」
よく見ると、野口は少し青い顔をしている。
「あ、お冷やの方が良さそうですね」
千佳子は気をきかせて、お冷やを取りに離れた。
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