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「わざわざすみません」
野口はそう言うと、お冷やを受け取った。
「災難でしたね」
「いや、本当のことですから」
野口はお冷やを一気飲みした。
「それにしても……今の一言は的確だった」
千佳子はきょとんとした。
「……どういう意味だったんですか?私も分からなくて」
「知ったこっちゃねーよって意味です」
千佳子も吹き出した。
「ホント、その通りですね。さすが深雪先生!」
「でも悪口としてのスラングですから、普通に言ったら反感を買いますからね」
野口はあわてて付け足した。
それでも千佳子は笑いが止まらなかった。
「これ、歌の題名にあるんです」
「そうなんですか」
「洋楽とか聴きますか?」
多摩から解放されて、酔いも手伝って野口は饒舌だ。
「いや、あまり……」
「そうですか。僕は専ら洋楽専門で……って、僕話しすぎですね」
野口は頭をかいた。
「いえ、野口先生の歓迎会ですから。好きにしゃべっていいですよ」
千佳子は言い切った。
「僕、佐伯先生に謝らなければなりません」
「え?」
千佳子は引っ越しの話だと察した。
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