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「せっかく教職についたんだから、長く続けてもらいたいですし」
深雪の真意はそこにあった。
理想と違う、同僚とうまくいかない、保護者ともめた、激務……様々な理由で若い教師が育ち辛い現代だ。その時代と直結した就職難を経験した深雪ならではだろう。
「私の頃はまだマシだったかも」
千佳子は呟いた。
「そうなんですか?」
「……うん。就職難だったけど求人はあったし、今でこそ激務だけど変な親も少なかったし……生徒も今より扱い易かったな」
「扱い易いって……」
深雪が苦笑した。
苦笑しても美人だ、千佳子はそう思った。
「佐伯先生は、野口先生とどうなんですか?」
「どうって?」
「うまくいきそうですか?」
「ん?、ただの教育担当だしね。本人次第じゃない?」
「そ、そーじゃなくて!」
深雪が急に大きな声を出した。
「え?」
「……あの、その、男として」
深雪の声が急に小さくなった。
「圏外」
「は?」
「だって相手既婚者だし……私アラフォーだし」
千佳子は言い切った。
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