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「開き直りですか?」
「んー、ちょっと違うかな。結婚できることへのひがみってとこ」
それだけ言うと、千佳子はベッドから這い出た。
野口が即座に背中を向けた。
「ん?」
千佳子は下着姿だった。
「あ、そっか。ごめんごめん」
急いでトレーナーやジーンズをかきあつめて、着込んだ。
「はい、いいよ?」
またしても野口の顔は赤い。
「私、結婚無理なんだよね」
急に、野口には恋愛対象が女性であることを言っておきたい気になった。
「え?」
野口はきょとんとしている。
「私、女の人が好きなの」
「……」
驚きのあまりか、野口は目を丸くした。
「だから結婚できないと」
「はい、その通り。だから、奥さんに言っても平気だよ。野口先生がその気にならない限り、何も起こりようがないから」
それだけ言うと、千佳子はキッチンに行った。
「パン食べる?」
「……はい」
小さく頷くと、野口は床にあぐらをかいて座った。
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