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そう反射的に勘繰(かんぐ)ってしまう少女は、細い肩を怒らせて内心のイライラがピークにまで達してしまう。
「ちょっと、あんた!」
いくら人気のないがらんどうの大広間だからとそんなヒステリックな声を上げてしまいかけるに、目の前の動かぬ山が、黒服男がピクリと反応する。
寡黙なエージェントには付きものの大判のサングラスでこの目元を完全に隠して、どこを見ているともつかない無表情でもこちらを暗いグラス越しに見返しているのか、まずは落ち着いた通りのいいバリトンを返してくる。
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