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「…ドアは開いたままだったがな? レディの部屋、と呼ぶにはここはいかんせん広すぎるし、ずいぶんと殺風景に見えるが…! もとよりそう、本来の部屋にはノックをしても応答がなかったものだが? 結果、このムダに広い屋敷を当てもなく探し回るのは少々、手間だったぞ…」
「本当に失礼ね? それはほんとにご苦労さま! あの別館からこの本館まで探し回ったのならさぞかし時間が掛かったことでしょうけど、おかげさまでこちらは待ちくたびれてしまったわ…こんなさびしいところでね!」
「ふむ…ちまたでは名の知れた金持ちの屋敷にしては、ずいぶんと控えめなむしろ貧相なありさまだな、ここは? この広間にしても、まるでそれらしい調度品のたぐいがひとつもありはしない…! 金品が目当てのこそ泥などはきっとひどい肩透かしを食うことだろう」
「ふんっ…ええそうよ、今さら盗るものなんてありはしないわ! そんなものは心ないひとたちがとっくの昔に我先にと持ち去っていったのだから…。残ったのは、無残に荒らされたこの屋敷と、そこで今やただひとりの住人、つまりはこのわたしだけね…」
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