-クロフク- プレリュード 第一話 

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「身内はいないのだったな? その若さで天涯孤独の身か。使用人たちには、屋敷のモノは遺言でおのおの好きにするようにとのお触れがあったのだろう。それで十分に退職金代わりにはなったのか。これだけ広い館(やかた)とその周りの広大な敷地はさすがに持っていくわけには行かなかったわけだが? つまるところそれこそが残された遺産ではあるわけであり…ただし娘ひとりにはこれまた十分だろうな?」   「ええそうよ、残った屋敷も敷地もあなたの好きにすればいいと言われたわ! いっそ売り払えば一生食いっぱぐれはしないともね!!」   「詰まるところ自暴自棄になって相続権の放棄はしなかったのだな? うむ、いい判断だ! (相続の)手続きもつつがなく完了したと見た。あの用意周到なじいさんのことだから、いっそ生前贈与だな。そうともこれだけの資産家なのだから、隠し財産くらいどこぞかに転がっていても不思議ではない。売るのはある程度の家捜(やさが)ししてからでも遅くはないだろう。これだけの広さがあれば、あとあと新たな使いようも出てくるわけであり…実にいいことだ!」  
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