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逆立(さかだ)てた柳眉(りゅうび)がいつしか怪訝なかたちに歪(ゆが)む…!
ひどくいかがわしげな色を少女の表情に見て取る男は、こちらもまた逆方向にこの丸顔を傾がせる。
一瞬、妙な間が生まれかけたが、どうにか気を取り直す娘はなおのこと毅然とした態度で見上げる黒服男をきつく牽制(けんせい)する。
「あなたってやっぱり、ヘン…! ムダに太った見てくれと地味な格好はそのままだけど、今までの人形たちはそんなにおしゃべりじゃなかったわ! いつもただ無言で背後に立っているだけの、ただのでくの坊ばかりだったはずなのに、どうして? むしろちょっとキモチ悪いわ、ひょっとして不良品? ねえ、契約しておいてなんだけど、今からでも返品、交換はきかないの??」
「どうにも口の悪いご主人さまだ…でくの坊ではあれ、それに生命(いのち)を救われたことも多々あったのだろう? しょっぱなからこのクレームとは依頼人が泣くな…! あれから、おまえのおじいさまからすればおよそ最高の人選だったはずなのだが、この俺は? あと人形呼ばわりは気分が悪い。これまでのヤツらがどうあれ、俺はおのれの存在とみずからの個性に少なからぬ誇り、プライドを持っているのだから…。ふむ、確かにこのあたりは特別なのかも知れないな? おまえがこれまで見てきた同類、お人形さんたちとは…! しかしそのぶんだとそいつらに固有の名称、れっきとした名前があったことも知らないのではないか? ならばこの俺のことはそうだ、しっかりとこの名前で呼ぶがいい…!!」
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